ヨリコ姫の改心~浄土真宗と霊界物語~②
○大女帝ヨリコ姫の改心
この曲神の権化たる玄真坊が仕えた山賊の大頭目であったのが、ヨリコ姫である。このヨリコ姫が改心し、大神を讃美するまでになっている。まさに水と氷との善悪の喩えを、自ら実践した人物である。
では、どうすれば改心できるのか。自らの罪業を知り、瑞霊の教えに身を任せればいいとヨリコ姫は歌う。
吾が罪業を信知して
瑞霊の教に乗ずれば
すなはち汚穢の身は清く
全天界に昇往し
法性常楽証せしめ給ふ
〔第六十七巻第五章「浪の鼓」ヨリコ姫 酉〕
では、実際にヨリコ姫はどう改心に至ったのか。その軌跡を追ってみる。
まず、第六十六巻第八章「神乎(か)魔乎(か)」に、天成の美人ヨリコ姫について余すところなく描写されている。
かれヨリコ姫は梅花の唇、柳の眉、鈴をはつたやうな眼、白い顔の中央に、こんもりとした恰好のよい鼻、白珊瑚の歯の色、背は高からず低からず、地蔵の肩…
〔第六十六巻第八章「神乎魔乎」以下同じ〕
というように、顔からさらに全身へとくまなく描写が続く。この続きを書くには少し恥ずかしい箇所があるので、各自お読みいただきたい。
そして、「歩行する姿は春の花の微風に揺れるがごとく、縦から見ても横から見ても、どこに点の打ちどころのない嬋娟(せんけん)窈窕(えうてう)たる傾国の美人であつた」と結ばれている。このヨリコ姫が野心を抱く。
・「如何にもして自分に勝る逞(たくま)しい、雄々しい男子と結婚して見たいとの念慮」でバラモン教の修験者玄真坊を「普通の男子に比ぶればチツとは男らしい」と見定め、「天下を驚かすやうな大賭博が打つて見たい」と「玄真坊を口説き落とし」十八才で、家を抜け出し、
・「表面に柔順と貞淑を粧ひ」、「表面あらゆる媚(こび)を呈し」、「三千人の悪党(あくとう)輩(ばら)を利用してトルマン国を吾が手に入れ」「月の国七千余国の大女帝となり、驍名(げうめい)を天下に輝かさむ」との大陰謀の豺(さい)狼(らう)の心を深く包んで時を待ち、
ついに大女帝と仰がれるまでに至っている。
とてもしおらしく可愛い娘と結婚して幸せだなあと思っていたところ、年を経ていつの間にか、女帝のようになっていたという経験を持つ男性は、世に多いのではないだろうか。
その大女帝ヨリコ姫の悪人ぶりである。
「鬼女となり悪魔となり、竜蛇となり国を傾け城を覆へし、あらゆる男子の心胆をとろかし、男子の稜々(りようりよう)たる気骨も、肉離れのするところまで魔の手を伸ば」し、「外道の骨頂、鬼畜の親玉、悪魔の集合場、暗黒無明の張本となつて天下を混乱し、あらゆる害毒を流布するに至る」
「男子の気骨を肉離れ」させ、「鬼畜の親玉」たるヨリコ姫であるが、その悪人ぶりが改心の直前のおいても、なお描かれる念の入れようである。
心に豺(さい)狼(らう)の爪牙(さうが)を蔵し、天下を掌握せむと、昼夜肝胆を砕いて、外面如(がいめんにょ)菩薩内心如(ぼさつないしんにょ)夜叉(やしゃ)、羅刹(らせつ)悪鬼の権化ともたとふべき山賊の大頭目、ヨリコ姫女帝
〔第六十七巻第一章「梅の梅花」以下同じ〕
ところが梅公の神気に触れると、一転即座にヨリコ姫は改心する。一体、梅公のどの言霊に感応したのか、ページを見返すほどである。
梅公が口より迸(ほとばし)る天性の神気に打たれて、忽(たちま)ち心内に天変地妖を起し、胸には革新軍の喇叭の音響き、五臓六腑一度に更生的活動を起して、専制と強圧と尊貴を願ふ慾念と、自己愛の兇党連は俄(にわ)かに影を潜め、惟神の本性、生れ赤児の真心に立ちかへり、一身の利慾を忘れ、神に従ひ神を愛し、人を愛し万有一切を愛するの宇宙的大恋愛心に往生した
そして、天地までが「宇宙的大恋愛心」たるヨリコ姫の改心に感応する。美しい文章が続く。
その真心は天地に感応し、天は高く清く澄みわたり、一点の雲もなく、七宝(しちほう)を鏤(ちりば)めたるが
ごとき星の大空をボカして、見渡す東の原野より千草を分けて昇り来たる上弦の月光、あたかも切れ味のよい庖丁をもつて、円満具足せる西瓜(すいくわ)を真中より二つに手際よく切りわけしごとき、輪廓の判然とした白銀の半玉(はんぎょく)、たちまち
天地を照り輝かし、地上に往来する蟻の姿さへも明瞭に見えてきた。
このように、「大なる悪事を為したる者は悔い改むる心もまた深い」〔第七十二巻第七章「鰹の網引」〕のである。
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