渋沢栄一と霊界物語  (2-2 最終回)

⑥鉄道会社の社長

〔霊界物語〕『其方は娑婆に於て、殺人鉄道 嵐脈(らんみやく)会社の社長兼取締役を致して居つたであらう』

 渋沢の鉄道会社の経営に関する記載が、文春文庫の鹿島茂著「渋沢栄一下 論語篇」にあった。  

確かに、霊界物語にあるように渋沢は、韓国の京釜鉄道株式会社などの取締役に就いている。また、文春文庫では、渋沢は前経営者の人夫虐待に憤慨したとあるが、「殺人鉄道」とあるように渋沢も人夫を虐待しながら敷設工事を行ったのかもしれない。あるいは、鉄道が軍事目的であったことを指して「殺人鉄道」と言っているのかもしれない。 

 〔文春文庫〕渋沢社長は韓国に渡りて親しくモールスの工事を視察したるに、就中韓人夫を虐使するの弊甚だしく。渋沢はモールスの工事に憤慨し、人夫たちの待遇改善を要求した。京仁鉄道合資会社と組織を変更し、渋沢がその取締役社長に就任した。明治三十二年五月のこと。渋沢は、軍事目的で鉄道を敷設したがっている山県・桂の政策に乗る形で、政府の補助と援助を引き出す。三十四年六月には、京釜鉄道株式会社を設立し、自ら取締役会長に収まった。

  ○英雄豪傑などの霊界での哀れさ

このように欲深い極道となったことを、慾野深蔵は「娑婆の規則に依つて止むを得ず優勝劣敗的行動を致し」とか、「社会の組織制度が、さうせなくちやならない様に」など、娑婆世界のせいにしている。また、法律の内容や精神が「法文の裏をくぐるべく仕組まれて」あり、「之をうまく切抜ける者が、娑婆の有力者と云ふ者」だと開き直っている。

そして慾野深蔵は慾界地獄に進むが、出口王仁三郎聖師が霊界に行かれた時、古今の英雄豪傑などと言われた人々が、実は現界で自愛と世間愛に惑溺し神を認めなかったため、霊界で哀れな姿でいるのを見ておられる。また、彼らと同様な現代の政治家たちの行く末も憐れんでおられる。先に森友・加計学園問題で追求をうまく切り抜けた政治家などのことも、きっと出口聖師は憐れんでおられるに違いない。

私たちは、自愛や世間愛から離れて心から神を信じる信仰者となるとともに、霊界物語に示された救いの御教えを世間の人々に伝えていく使命がある。

霊界を見聞したる時、わが記憶に残れる古人又は現代に肉体を有せる英雄豪傑、智者賢者といはるる人々の精霊に会ひ…彼等の総ては自愛と世間愛に在世中惑溺し、自尊心強く且(かつ)神の存在を認めざりし者のみなれば、霊界に在りては実に弱き者、貧しき者、賤しき者として遇せられつつあつた…之を思へば現代に於ける政治家又は智者学者などの身の上を思ふにつけ、実に憐愍(れんびん)の情に堪へない思ひがするのである。

〔第五十巻第一章「至善至悪」〕

〔後記〕

前回の大河ドラマ「麒麟がくる」の二月七日の最終回、信長への謀反を明智光秀が亀山城で部下に伝える場面があった。そして、その亀山城の床の間には大きな三日月が描かれてあった。

その亀山城跡を出口聖師は購入された。聖地として整備し大正十四年二月、「天恩郷」と命名され今日に至っている。ドラマの三日月の場面から、出口聖師の御霊(おみたま)である素盞嗚尊が「月の大神」と呼ばれていることが思い浮かんだ。

第四十七巻第一〇章 震士震商(一二四三)

 治国別、竜公両人は伊吹戸主の神の関所に於て優待され茶果を饗応せられ、少時休息してゐると、其前をスタスタと勢よく通りかかつたデツプリ肥えた六十男がある。

 赤顔の守衛はあわてて、其男を引きとめ、

『コラ待てツ』

と一喝した。男は後振返り、不機嫌な顔をして、

『何だ天下の大道を往来するのに、待てと云つて妨げる不道理な事があるか、エー、〔②〕俺をどなたと心得て居る。傷死位 窘(くん)死等 死爵 鬼族婬偽員 慾野深蔵といふ紳士だ。邪魔を致すと、交番へ引渡さうか』

『オイ、其方はここをどこと心得て居る』

『言はいでもきまつた事だ。野蛮未開の北海道ぢやないか』

『其方は何うして此処へ来たのだ』

『空中視察の為、飛行機に乗つて居つた所、プロペラの加減が悪くて、風波でこんな方へやつて来たのだ。何(ど)うだ俺を本国へ案内してくれないか、さうすりや腐つた酒の一杯も呑ましてやらぬこともないワイ』

『コリヤコリヤ慾野深蔵、ここは冥途(めいど)だぞ、天(あめ)の八衢(やちまた)を知らぬか』

『鳴動も爆発もあつたものかい、そんなメードウな事を云ふない、俺こそはフサの国に於て遠近に名を知られた紳士だ……否紳士兼紳商だ。男のボーイに酒をつがす時には男酌閣下で、自分一人ついで呑む時には私酌閣下だ。エヽーン、そんなおどし文句を並べて、鳴動だの、破裂だのと云はずに、俺の案内でもしたらどうだ、貴様もこんな所で二銭銅貨の様な顔をして、しやちこ張つて居つても、気が利かぬぢやないか。銅銭ロクな奴ぢやあろまいが、俺も大度量をオツ放り出して、椀給で門番にでも救うてやらう』

『コリヤ深蔵、貴様はチツとばかり酒に喰(くら)ひ酔うてゐるな、今紳士紳商だと吐(ぬか)したが〔⑤〕慾にかけたら親子の間でも公事(くじ)を致したり、又人の悪口を針小棒大に吹聴致し、自己の名利栄達を計り、身上を拵(こしら)へた真極道だらう、チヤンとここな帳面についてゐるのだ、何程娑婆で羽振がよくても霊界へ来ては最早駄目だ。サ、ここの衡(はかり)にかかれ、貴様の罪を測量してやらう』

『さうすると、此処はヤツパリ冥途でげすかなア』

『気がついたか、貴様は積悪の酬(むくい)に仍(よ)りて、地震の為に震死した震死代物だらう』

『成程、さう承はれば朧げに記憶に浮かむで来ますワイ。飛行機に乗つたと思つたのは……さうすると魂が宙に飛んだのかな』

 赤面(あかづら)の守衛は帳面をくりながら、

〔①〕『其方は慾野深蔵と云つたな、幼名は渋柿泥右衛門と申さうがな』

『ハイ、ヨク、深い所まで御存じで厶(ござ)いますなア、それに間違ひは厶いませぬ』

〔⑥〕『其方は娑婆に於て、殺人鉄道 嵐脈(らんみゃく)会社の社長兼取締役を致して居つたであらう』

『ハイ其通りで厶います』

〔③〕『優先株だとか、幽霊株だとか申して、沢山な蕪(かぶら)や大根を、金も出さずに吾物に致しただらう』

『ハイそんな事もあつたでせう、併(しか)しそれを致さねば現界に於ては、鬼族院偽員になる事も出来ず、紳士紳商といはれる事も出来ませぬから、娑婆の規則に依つて止むを得ず優勝劣敗的行動を致しました、コリヤ決して私の罪ではありませぬ、社会の罪で厶います、何分社会の組織制度が、さうせなくちやならない様になつてゐるのですからなア』

『馬鹿申せ、そんな法律が何時発布されたか』

『表面から見れば、左様な事はありませぬが、其内容及精神から考へれば、法文の裏をくぐるべく仕組まれてあるものですから、之をうまく切抜ける者が、娑婆の有力者と云ふ者です、総理大臣や或は小爵や柄杓や疳癪などの高位に昇らうと思へば、真面目臭く、法文などを守つて居つちや、娑婆では犬に小便をかけられ猫にふみつぶされて了(しま)ひますワ。郷に入つては郷に従へですから、娑婆ではこれでも立派な公民、紳士中でも錚々(さうさう)たる人物で厶います、ここへ来れば、凡ての行方(やりかた)が違ふでせうが、娑婆は娑婆の法律、霊界は霊界の法律があるでせう、まだ霊界へ来てから善もやつた事がない代りに、悪をやる暇もありませぬ、娑婆の事迄、死んだ子の年をくる様に、こんな所でゴテゴテ云はれちや、やり切れませぬからなア。エヽ、何だか気がせく、斯様(かよう)な所でヒマ取つては、第一タイムの損害だ、〔④〕娑婆で金貸しをして居つた時にや、寝とつても起きとつても、時計の針がケチケチと鳴る内に、金の利息が、十円札で一枚づつ、輪転機で新聞を印刷する様に、ポイポイと生れて来たものだが、最早ここへ来ては無一物だ、之から一つ冥途を開拓して、娑婆に居つた時よりもモ一つ勉強家となり、大地主となつて、冥途の一生を送りたい。どうぞ邪魔をして下さるな』

と云ひながら、大股にふん張つて、関所を突破せむとする。

此騒ぎに伊吹戸主の神は関所の窓をあけて、一寸覗かせ給うた。慾野深蔵は判神(はんしん)の霊光に打たれて、アツと其場に悶絶し、蟹の様な泡を吹いて苦み出した。忽(たちま)ち館の一方より数人の番卒現はれ来り、慾野深蔵の体を荷車に乗せ、ガラガラガラガラと厭らしき音をさせながら、何処ともなく運び去つた。之は地獄道の大門口内へ放り込みに行つたのである。深蔵は暗き門内へ放り込まれ、ハツと気がつき、ブツブツ小言を小声で囁(ささや)きながら、トボトボと慾界地獄を指して進み行くのであつた。

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