神素盞嗚大神

第一四章 神素盞嗚大神

ここまでが記紀神話以前のあらましで、『霊界物語』一巻から六巻までに王仁三郎の口を通して筆録されている。これは国常立尊の御退隠にかかわるあたり、神代の昔、素盞鳴尊が高天原を追放される記紀神話にどこか似ている。相応の理により、地上霊界の主宰神である国常立尊の動向は、地上現界の主宰神素盞鳴尊の行為に投影されるのか。

この先語られる神代史はまさに記紀神話を裏返し、問い直す対抗神話といえる。

『古事記』では、素盞鳴尊は、父伊邪那岐尊に命じられた大海原を治めきれず、ただ手もなく長い年月を泣きわめく。あげくに父神にとがめられ、地上を捨てて荒々しく高天原に上り、姉である司神天照大神に抵抗し、乱暴狼籍(らんぼうろうぜき)を働く。たまりかねて姉神は岩戸にこもり常暗の世を招くに至って、万神は智恵をかたむけ岩戸を聞き、素盞嗚尊を弾劾の上、追放する。何ともあきれはてた悪神なのである

しかし高天原を追われて出雲国に降った素盞嗚尊は、どうしたことか突如、詩的で英雄的な神に変神する。粗暴で無能で女々しくて何ひとつ取柄のなかった神が、ここでは恐ろしい八岐の大蛇を退治して悪の根を断ち、櫛名田(くしなだ)姫を救け、大蛇の尾から出た名刀を天照大神に献上する。勇気凍々、優れた智謀、果断な処置、自分を疑い追放した姉神へさらりと向ける崇敬の志。

出雲の地に須賀宮を建て、妻を得た喜ぴを

「八雲立つ出雲八重垣妻ごみに八重垣つくるその八重垣を」と美しい歌に託す詩情。いったいどちらの素盞鳴尊が実像なのか

素盞鳴の 神世にいでてはたらかば がぜんこの世は浦安の国

伊邪那岐の 神の鼻より現れましし 素盞鳴の神先端の神

先端の 先端をゆく素盞鳴の 神のいでます世とはなりけり

素盞鳴と いう言霊は現代語の 先端を行く百破戦闘よ

蓑笠を つけて国々まわりつつ 霊魂しらべし神ぞとうとき

素盞鳴の 神は神代のエロの神 三十一文字で世をならしましぬ

八雲たつ いづも八重垣つまごみにの 歌の心を知れる人なし

素盞鳴の 神の始めし敷島の 歌は善言美詞(みやび)のはじめなりけり

素盞鳴の 神にならいて吾今に、歩みつづくる敷島の道

海原を 知らせと神のメッセージ いまにまったき素盞鳴の神

さらにまた年をへて、違った素盞鳴尊の顔がある。根の堅州国に住んでいた時のこと、大国主命は悪逆非道の兄弟八十神から逃れて、その祖である素盞鳴尊のもとへ逃げこむ。そこで尊の娘須勢理姫と一目で恋におちる。

素盞鳴尊は大国主命を蛇の室、翌夜はムカデと蜂の室に寝かせた上、野火を放ってあやうく焼き殺そうとする。そのやり方はまことに乱暴で意地が悪い。大国主命は姫や野鼠の助けを得て、これらの難問を無事に切り抜ける。素盞鳴尊は頭のシラミをとらしているうち、寝てしまう。大国主命は姫と共謀して、寝入った素盞鳴尊の髪を垂木(たるぎ)に結びつけ、巨岩で戸をふさぎ、生太万(いくたち)、生弓矢(いくゆみや)と天(あめ)の詔琴(のりごと)(政治的、宗教的支配力の象徴)を盗み出し、須勢理姫を背おって逃げ出す。

天の詔琴が木にあたって鳴り響く。目ざめた尊は室を引き倒し、結びつけられた髪をとかして黄泉比良坂(よもつひらさか)まで追いつめ、遠く逃げゆく二人に叫ぶ。

「そのお前が持って出た生太万、生弓矢で八十神どもを追い放ち、国の支配者となって、わが娘須勢理姫を正妻となし、宇迦(うか)の山に立派な宮殿を造って住めよ、こやつめが」

髪の中に無数のムカデを飼っておくような、見るも恐ろしい素盞鳴尊。その婿を試す方法はいかにも荒っぽい。しかし最後のせりふにこもる深い情愛はどうであろう。可愛い娘と生命ともいうべき宝

を盗んで逃げる男に向って、「こやつめが」と投げる一言に、無限のいとおしみがあふれでいるではないか。

数々の試練をくぐり抜けて自分をあざむいた男に対して、その資質を審神し、娘との愛をもたしかめ、盗んだ宝を与えて、その未来を指示し祝福してやる。なんと行き届いた舅であろうか。

大本柏分苑

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